色の濃い肌にも SPF は必須です

Written by Sumayah Jamal, MD, FAAD as part of The Brown Skin Agenda Initiative.

何十年にもわたって、私は「スキン・オブ・カラー(色素の多い肌)」のケアに情熱を注いできました。そして、ひとつの結論にたどり着きました。それは、実際に施術を行っている時間と同じくらい、スキン・オブ・カラーにまつわる“誤解”を解くことに時間を費やしている、ということです。とくに多いのが「黒人やブラウンスキンには日焼け止めは要らない」という神話。こうした “有色人種には日焼け止め不要” という思い込みがステレオタイプとなり、「自分の肌はメラニンが多いから、日焼け対策は必要ない」と信じてしまう心理につながっています。

そしてこの誤解は、非常に大きな代償を生んでいます。ここで登場するのが、私が「事実 vs ただし書き(Fact vs Caveat)」と呼んでいる統計データです。

Fact vs. caveat(事実と“ただし書き”)

  • 【FACT】スキン・オブ・カラーは、メラニン量が多く紫外線(UV)を自然にフィルター/ブロックしやすいため、統計上、皮膚がんのリスクは確かに低くなります。
  • 【CAVEAT】しかし、ここで重要なのは「リスクが低い」という言葉です。研究が示しているのは「有色人種は皮膚がんにならない」ではなく、「可能性が低い」ということだけ。「可能性が低い」「リスクが低い」は、「絶対に起きない」「ゼロ」という意味ではありません。
  • 【CAVEAT】一方で、有色人種における皮膚がんによる死亡率は高いことが分かっています。これは、症状が分かりにくく発見が遅れやすいことや、進行した段階で診断されることが多いこと、そして医療へのアクセスの問題が背景にあると報告されています(Asian Pacific Journal of Cancer Prevention より)。
  • 【FACT】International Journal of Dermatology によると、メラニンリッチな肌は、白い肌と比べて日焼けを起こしにくいことが示されています。ある研究では、黒人の表皮は“自然の SPF 13.4”、一方でより明るい肌は SPF 3.3 程度と推定されています。
  • 【CAVEAT】ただし、ここでもキーワードは「起こしにくい(less likely)」です。「起こしにくい」は「ゼロ」ではありません。メラニンがあるからといって、UV ダメージから完全に守られるわけではなく、さまざまな種類の光老化から肌を守るためには、やはり SPF が必要です。
  • 【CAVEAT】日焼けの目に見えるサインとして「赤み」がよく挙げられますが、これは色の濃い肌では目立ちにくい場合があります。乾燥やかゆみといった症状も日焼けのサインですが、見逃されやすく、「自分は一度も日焼けしたことがない=日焼け止めは必要ない」と誤解してしまう人も少なくありません。

多くのことがそうであるように、私たちは「自分たちでつくり上げたストーリー」を一番信じやすいものです。しかし、“スキン・オブ・カラーに日焼け止めは不要” というストーリーは、科学的なエビデンスによって完全に否定されています。

黒い肌・ブラウンスキンは、どう紫外線から自分を守るべき?

まずは、これまでのステレオタイプを手放し、「あらゆる肌タイプ・肌色にとって日焼け止めは必要」という科学的事実を受け入れることから始めましょう。次に理解したいのは、臨床試験や医学誌のデータが、ようやくスキン・オブ・カラーを十分に反映し始めたばかりだということです。今後は、色素の多い肌における UV ダメージ、皮膚がん、サンプロテクション(SPF)の効果について、より正確で多様性のある統計へとアップデートされていくでしょう。だからこそ、定期的に皮膚科でスキンチェックを受けることはとても重要です。最新の知見に基づいて、色の濃い肌における皮膚がんを早期に発見・予防する手助けをしてくれるからです。また、白浮きしない SPF や、顔用の日焼け止めなど「色の濃い肌でもなじむ処方」を具体的に教えてもらうこともできます。

「昔の日焼け止め」とはもう違います

かつての SPF といえば、「白くて、ベタついて、伸ばしにくい」「せっかくの美しいブラウンスキンを、灰色や紫っぽく見せてしまう」ものが多くありました。しかし今は違います。信頼できるスキンケアブランドや BIPOC(ブラック・先住民・有色人種)オーナーのブランドから、“黒い肌・色の濃い肌のための日焼け止め” が登場し、健康な肌づくりに欠かせない基本アイテムとして認識されるようになってきました。最新のサンスクリーンは、肌の上でほぼ透明になり、保湿クリームのようにスッとなじんでいきます。重さや白浮きはなく、メイクの下にも快適に仕込めるうえ、肌のコンディションを底上げしてくれる美容成分入りのものも増えています。

もし、ニキビができやすかったり、「日焼け止めを塗ると肌荒れする」と感じているなら、今はノンコメドジェニック(毛穴詰まりを起こしにくい)、保湿力が高く、低刺激な処方を選びやすい時代です。自分の肌タイプや肌状態に合った日焼け止めを選ぶことで、「守る」と「整える」を同時に叶えられます。軽いつけ心地で、保湿しながらしっかり守ってくれる SPF を探している方には、VI Derm SPF 50 Daily UV Defense Broad Spectrum Sunscreen のようなアイテムがおすすめです。

黒い肌・ブラウンスキン(そしてすべての肌色)にとって “ブロードスペクトラム SPF” が重要な理由

顔用であれボディ用であれ、SPF を選ぶときは必ず「ブロードスペクトラム(broad-spectrum)」「UVA・UVB から守る」といった表記があるものを選びましょう。ブロードスペクトラムとは、紫外線 UVA と UVB の両方をカバーするという意味です。UVA は肌の深部まで到達し、色ムラ・たるみ・シワといった早期老化の原因であるだけでなく、皮膚がんの主な要因のひとつと考えられています。一方、UVB は主にサンバーン(日焼けによるやけど)を引き起こし、こちらも皮膚がんの原因になります。どちらの波長からも肌を守ることは、最も色の白い肌から、メラニンリッチな肌まで、すべての肌タイプ・肌色にとって重要です。

ブルーライト(青色光)は気にするべき?

結論から言えば、「はい」です。高いレベルのブルーライト暴露は、色の濃い肌における色素沈着の原因になり得ることが分かっています。ブルーライトについて意外と知られていない事実がひとつあります。それは、スマートフォンやパソコンなどの電子機器だけでなく、「太陽」そのものもブルーライトを放出しているということ。つまり、ブルーライトは昔からずっと存在しており、私たちの周りのいたるところにあるのです。近年は、デジタルスクリーンや蛍光灯への慢性的な曝露によって、その影響が注目されるようになりました。デジタル機器からのブルーライトに関する研究は進行中のテーマですが、「まだ研究途中だから」といって、対策の必要性を軽視すべきではありません。ブルーライト対策もできる SPF を選ぶなら、酸化鉄(iron oxides)や non-nano の酸化亜鉛(zinc oxide)配合のものがおすすめです。また、酸化亜鉛ベースの日焼け止めには、ブルーライトダメージを防ぐために抗酸化成分を追加する処方も増えています。

本当に SPF の塗り直しって必要?

理想的には、「2 時間おきに塗り直す」のが、室内・屋外を問わずベストな紫外線防御とされています。ただし現実問題として、朝の保湿+SPF の上からメイクをしているときなど、日中に何度も塗り直すのは難しいことも多いでしょう。スプレーやパウダータイプの SPF は、メイクの上からの塗り直しに便利な選択肢です。私は患者さんには、「完璧に 2 時間おきでなくてもいいので、『可能なタイミングで塗り直す』という意識を持つ」ことをすすめています。ただし、例外があります。それは、屋外で長時間過ごし、汗をかいたり泳いだりする場合です。こうした状況では、少なくとも 2 時間ごとの塗り直しが、日焼けダメージから肌を守るうえで非常に重要になります。

最後にもうひとつ:SPF は “季節限定” ではありません

私の患者さんの肌色は実にさまざまですが、そこに共通して見られる「完全に誤った思い込み」がひとつあります。それは、「日焼け止めは季節モノ。肌を露出する春夏だけでいい」という考えです。

現実には、日焼けや光老化を引き起こすのは「UV 光」です。太陽が出ているあいだ、UV 光は常に存在しています。雲を通過し、窓ガラスもすり抜けてきます。冬のあいだはサンバーンの頻度こそ減るかもしれませんが、UV 暴露は 1 日単位ではなく「累積」で効いてきます。その結果として、シミ・色ムラ・早期のシワ・たるみといった見た目の変化から、メラノーマや皮膚がんといったより深刻な問題まで、時間をかけて表面化してくるのです。

要するに、「季節を問わず、毎日のルーティンに SPF を組み込む」ことは、1 年を通じて自分の UV 暴露を意識するいちばん簡単で効果的な方法なのかもしれません。それは、明るい肌にとっても、メラニンリッチな肌にとっても、そしてその間のすべての肌色にとっても同じです。

Dr. Sumayah Jamal について

Sumayah Jamal 先生(MD, PhD)は、Mt. Sinai School of Medicine の臨床助教授(皮膚科)であり、スキン・オブ・カラーを専門としています。ジョンズ・ホプキンス大学で学部課程を修了後、ニューヨーク大学(NYU)医学部で MD-PhD を取得しました。その後、Columbia Presbyterian にて一般内科研修、NYU 医学部にて皮膚科レジデンシーを修了しています。

Jamal 先生は、NYU 医学部で 13 年間にわたり Ethnic Skin クリニックの初代ディレクターを務め、その後 Schweiger Dermatology Group に移籍し、現在は Skin of Color Specialty Clinic のプログラムディレクターとして活動しています。

参考文献:

Preventative Medicine Reports, 2019

International Journal of Dermatology, Sunburn and sun protection in Black skin

Asian Pacific Journal of Cancer Prevention, Skin cancer concerns in people of color: Risk factors and Prevention

Healthline Website, Skin

University of Iowa Hospitals & Clinics, Sun safety