皮膚科医Q&A

Written by Corey L. Hartman M.D., FAAD as part of The Brown Skin Agenda Initiative.

「シワより嫌なものなんてない」と思っていませんか? 皮膚科医として言わせてもらうと、必ずしもそうとは限りません。実際、多くの患者さんにとって、色素沈着(ダークスポットや日焼けジミとも呼ばれます)は、肌を一番きれいに見せるうえで大きな“壁”になっています——肌の色が明るくても、濃くても、関係ありません。そして、シワは注入治療やフィラーなどで“即効性のある対処”がしやすい一方で、色素沈着やシミはもっと頑固で、継続と根気が必要です。私は患者さんにいつもこう伝えています。「色素沈着の治療は、短距離走ではなくマラソンです」と。

とくに、色の濃い肌の患者さんの色素沈着を治療する場合、肌の中にどれだけメラニン(色素)があるか、またはどれだけ少ないかを、必ず考慮に入れなくてはいけません。そして実は、色素沈着の治療法は、肌の色が濃い人(フィッツパトリックスキンタイプ 3, 4, 5, 6)と、肌が明るい人(タイプ 1, 2)とでは推奨が変わることがあります。この違いが、「色の濃い肌の色素沈着を改善できるか/悪化させてしまうか」の分かれ道になることもあるのです。


まずは基本:色素沈着とは? その原因は?

肌の色にかかわらず、すべての肌にはメラノサイトという細胞が存在し、メラニンを作り出して肌や髪の色を決めています。ところが、メラニンが過剰に作られると、まわりの肌よりも濃いスポット(斑点)やパッチ(色ムラ)が生じます。これが色素沈着です。

肌色にかかわらず、色素沈着は次のような要因で引き起こされることがあります:

  • ニキビや湿疹などの炎症性のトラブル
  • 日光による累積ダメージ、または強い日焼け
  • 新しい内服薬・外用薬の開始
  • ホルモンバランスの変化


なぜ黒い肌・ブラウンスキンは、色素沈着が起こりやすく、残りやすいの?

色の濃い肌は、メラノソーム(メラニンを内包する“小さな袋”)が大きく、メラニン量も多くなります。そのため、炎症が起きたときに、炎症後の色ムラが明るい肌よりも強く・長く残りやすくなります。これが「炎症後色素沈着(PIH)」と呼ばれる状態で、肌の色が濃い人の方が、明るい人よりも圧倒的に影響を受けやすいことが分かっています。その結果、色の濃い肌のダークスポットや色素沈着は、より頑固で、長引きやすく、「効きにくい」印象になってしまうのです——ただし、“治らない”わけではありません。

ホルモンバランスの乱れ、紫外線、炎症後色素沈着など、原因が何であれ、色の濃い肌のシミ・色ムラに向いている施術や成分もあれば、逆効果になりやすいものもあります。


色の濃い肌におすすめの「色素沈着治療」
とくに炎症後色素沈着の治療では、「治療したい」と「悪化させたくない」の両方を満たす“ちょうどよいライン”を見極めることが大切です。以下は、私が色の濃い肌の患者さんに実際によく用いている治療オプションです。

  • 中程度の深さのケミカルピーリング
    プロによるケミカルピーリングは一般的に、「浅い(ライト)」「中程度」「深い」の3段階があります。深いピーリングほど結果は劇的になりやすいですが、その分ダウンタイムも長くなり、「強すぎる治療」は炎症後色素沈着(PIH)を誘発してしまうリスクがあります。

    色の濃い肌の色素沈着には、中程度の深さのケミカルピーリングが、安全かつ効果的な選択肢です。私自身は、トリクロロ酢酸(TCA)が15%未満のピーリング——たとえば VI Peel——を処方することが多いです。使用するピーリング剤にどれくらいのTCAが含まれているかは非常に重要で、濃度が高すぎると炎症反応を強く引き起こし、結果としてPIHにつながる可能性があります。VI Peelは、ほぼ無痛で受けられるうえ、TCA濃度も15%未満に抑えられており、「炎症を起こさない範囲でダークスポットをしっかり薄くする」というバランスが保たれています。覚えておいてほしいのは、「ケミカルピーリング=痛い」は誤解だということ。中程度のピーリングでも、強い痛みなしに、十分なシミ改善効果を得ることは可能です。

  • ノンアブレイティブレーザー(非剥離系レーザー)
    色素沈着やダークスポット、色ムラのあるパッチ状の影を治療する際、多くのボード認定皮膚科医(私も含めて)は、Aerolase(全体的な肌の若返りに使用)、Fraxel(スポット状のシミをピンポイントで狙って薄くする)、Clear + Brilliant、Picosure などの「ノンアブレイティブレーザー」を勧めています。これらは、さまざまなスキントーンの色素沈着管理に使用される代表的な選択肢です。

    重要なのは、「すべてのレーザー治療が色の濃い肌に安全なわけではない」という点です。とくにアブレイティブ(剥離系)レーザーは、PIH のリスクが高くなる傾向があります。必ず、スキン・オブ・カラー(有色人種の肌)の治療経験が豊富な医師と相談し、自分の肌に合った治療プランを立ててください。

  • マイクロニードリング(ダーマペン・スタンプなど)
    マイクロニードリングは、極細の針を用いて肌表面にごく小さな穴(マイクロインジュリー)を多数あけ、肌本来の“治そうとする力”を引き出す治療です。この治癒過程のなかでコラーゲン産生が高まり、肌の質感やハリ・弾力の改善が期待できます。一般的には、ニキビ跡や凹凸、ざらつき、たるみなど「テクスチャー」の悩みに用いられることが多い治療ですが、肌の中にたまっている余分な色素の“かたまり”をほぐすサポートにもなります。望ましくない色素をしっかり持ち上げるためには、VI Peel のようなケミカルピーリングと組み合わせて行うのがおすすめです。

    マイクロニードリングは、色の濃い肌の色素沈着治療として注目されている一方で、「刺激でPIHが起きるのでは?」という不安から、誤解されることもあります。しかし、適切に行えば、すべてのスキントーンにとって安全な“ダークスポット治療”です。たしかに「皮膚に小さな傷をつける」治療ではありますが、その傷は非常に浅く(だからこそ“micro”)、表皮のごく表面に限局しているため、PIH を誘発するほど大きな炎症を引き起こすことはありません。


色の濃い肌の「シミケア」におすすめの外用成分

私の臨床現場では、システアミンやハイドロキノンといった、医師の処方が必要な成分を使うことも多くありますが、それに加えて「市販で手に入る優秀なサポート成分」もたくさんあります。代表的なものは、TXA(トラネキサム酸)、アゼライン酸、コウジ酸、ナイアシンアミド、そして乳酸やマンデル酸などのAHA(フルーツ酸)です。これらは、単独でも有用ですが、組み合わせて使うことで、肌全体のトーンムラをより効果的に整えることができます。

また、「長時間の日光暴露は色素沈着を確実に悪化させる」ということも忘れてはいけません。せっかく治療を頑張っても、紫外線ダメージが積み重なると、経過を逆戻りさせてしまうこともあります。曇りの日でも、必ず SPF30以上の日焼け止めを使いましょう。色の濃い肌には、軽いつけ心地の VI Derm SPF 50 日焼け止めのような製品をおすすめします。

あらゆるスキントーンの色素沈着やダークスポットを効果的に明るくしてくれる製品のひとつが、Vitality Institute の新製品 VI Derm Dark Spot Lifting Serum(5% トラネキサム酸配合)です。この製品は、医療用レベルに匹敵する“シミ改善”効果をもたらし、先ほど挙げたブライトニング成分のうち4つ——トラネキサム酸、コウジ酸、乳酸、ナイアシンアミド——をひとつの処方に組み込んでいます。これらが相乗的に働くことで、「今ある色素沈着をやわらげながら、今後のシミ予防も同時に行う」ことができ、しかも PIH を誘発しにくい、安全性の高いアプローチになります。最大限の効果を期待するなら、少なくとも数か月間、朝晩2回の使用と、毎日日焼け止めを併用するのがおすすめです。


色の濃い肌なら、避けたい外用成分&プロフェッショナルトリートメント

黒人・ブラウンスキンなどの色の濃い肌は、一般的に「アブレイティブ(皮膚表面を削るタイプ)のレーザーリサーフェシング」や「ディープピーリング(深いケミカルピーリング)」との相性がよくありません。これら2つの治療は、あえて皮膚に“コントロールされたダメージ”を与える手法ですが、そのダメージが深く入りすぎると、メラノサイトの働きを大きく乱してしまいます。その結果として、熱ダメージと表皮の損傷が強くなり、かえって色素沈着や PIH を悪化させるリスクが高まります。

また、TCA 濃度が15%を超える治療は、色の濃い肌には刺激が強すぎるとされており、「どこまで反応が出るか予測がつかない」「シミだけでなく脱色斑(白抜け)までつくってしまう」など、望ましくない結果を招きやすくなります。

最後に、ひとつ大切なことをお伝えしておきます。それは、「すべての肌が同じように反応するわけではない」ということです。治療への反応は、その人のDNA、これまでの肌トラブルの歴史、生活環境、ライフスタイルなど、さまざまな要因によって変わります。必ず、信頼できる医師やスキンケアのプロと相談し、「あなたの肌」と「あなたのバックグラウンド」に合わせたオーダーメイドの治療プランを立ててください。


Corey Hartman 医師(MD, FAAD)について

Corey L. Hartman 医師は、アラバマ州バーミングハムにある Skin Wellness Dermatology の創設者兼メディカルディレクターです。また、アラバマ大学医学部皮膚科の臨床助教授も務めています。ニューオーリンズ出身の Dr. Hartman は、エモリー大学で心理学の学士号を取得。その後、テネシー州ナッシュビルの Meharry Medical College で医学博士号(MD)を取得し、ルイジアナ州 Tulane University Medical Center で内科研修、アラバマ大学医学部で皮膚科レジデンシーを修了しました。アメリカ皮膚科学会認定のボード認定皮膚科医であり、American Academy of Dermatology および American Society for Dermatologic Surgery のフェローでもあります。

Dr. Hartman は、皮膚外科、注入治療(インジェクタブル)、毛髪再生治療、レーザー皮膚科に特に強い関心を持ち、全米各地の学会で美容医療やSNSマーケティングについて講演を行っています。Birmingham Magazine 読者投票による「Best of Birmingham: Dermatologist 2016」、About Town Magazine 読者による「Best Dermatologist 2018」に選出されており、最近では Skin of Color Society(色の濃い肌に特化した国際団体)の理事会メンバーにも就任しています。