ニキビ瘢痕とスキン・オブ・カラー(色の濃い肌)
Written by Corey L. Hartman M.D., FAAD as part of The Brown Skin Agenda Initiative.
ニキビ。予測不能なブレイクアウト、ブラックヘッド、ホワイトヘッド、嚢胞……それだけでも十分やっかいなのに、スキン・オブ・カラー(色の濃い肌)の人たちは、ニキビが治ったあとも長く続く、別の問題に悩まされることが少なくありません。それが「瘢痕(ニキビ跡)」と「色素沈着」です。より目立ちやすく、より深刻で、そしてより治療が難しい——これが色の濃い肌のニキビ跡の特徴です。ボード認定皮膚科医として、Vitality Institute の“The Brown Skin Agenda”初代ボードメンバーとして、そしてアラバマ州バーミングハムにある Skin Wellness Dermatology の創設者・メディカルディレクターとして、私は数多くのスキン・オブ・カラーの患者さんがニキビやその“置き土産”に苦しむ様子を見てきました。ここでは、ニキビ・ニキビ跡・色の濃い肌にとって安全で効果的な治療法について、皆さんの疑問にお答えします。
ニキビ&ニキビ瘢痕を防ぐための“ゴールデンルール”
多くのことに当てはまりますが、「予防は最高の治療」です。ニキビ瘢痕を防ぐいちばんの方法は、ニキビそのものを早期かつ積極的に治療することです。外用薬や安全な施術を組み合わせていきます。思春期ニキビであれ、大人ニキビであれ、皮脂バランスを整え、不要な角質や毛穴づまりをきちんと取り除くことで、ニキビの引き金を減らし、肌を安定させることができます。
では、「ニキビ跡(瘢痕)」に関しての本当のゴールデンルールとは何でしょうか? それは、どんな肌タイプ・肌色であっても共通して言えること——「とにかくいじらないこと」です。つぶさない・押さない・引っかかない。スキン・オブ・カラーの患者さんは、基本的には明るい肌の人と同じ種類のニキビ症状を経験しますが、問題はニキビが治る過程で起こる炎症の“後”にあります。その“後”の問題こそが、炎症後色素沈着(PIH)、いわゆるダークスポット・色ムラです。
メラニン(肌色を決める色素)は、本来、紫外線(UVダメージ)や早期老化から肌を守る心強い味方です。しかし、過剰なメラニン産生——つまり、ダークスポットや色素沈着として現れるもの——は、紫外線だけでなく、肌へのあらゆる“外傷”や“トラウマ”によって引き起こされ、悪化してしまうことがあります。残念ながら、身体はニキビによる炎症を「ケガ」とみなし、それに反応してメラニンを多く作り出すことがあります。その結果、色の濃い肌では、ニキビの炎症が引いたあとに、望ましくない色素沈着として残りやすくなるのです。さらに、ニキビを早くつぶしたり、何度も触ったりすると炎症が悪化し、メラニンリッチな肌が治癒していく過程で、茶色や紫がかった“頑固なニキビ跡”として定着してしまうことがあります。
色の濃い肌におけるニキビ・ニキビ瘢痕治療:安全なもの・注意が必要なもの
現在、ニキビ・瘢痕・色素沈着にアプローチするプロフェッショナルグレードの治療法は数多く存在します。細菌を減らし、皮脂分泌を安定させ、炎症を抑える——いわば「三位一体」のアプローチが可能です。ただし、本当に重要なのは、適切な処方設計と、それを見極める医師の技術・経験です。どの程度の強さまで許容されるのか、どこでブレーキをかけるのか。その見極めを誤ると、色素沈着を悪化させたり、すでにストレスを抱えている肌に炎症を上乗せしてしまうことになりかねません。
よく聞かれる質問のひとつが、「色の濃い肌におすすめしない治療は何ですか?」というものです。代表的なものとしては、深層ケミカルピーリング(フェノールピーリングなど)、IPL(Intense Pulsed Light:光線治療)、BBL(BroadBand Light:ブロードバンドライト治療)などが挙げられます。これらは色の濃い肌には推奨されません。
では逆に、「色の濃い肌におけるニキビ・ニキビ跡に安全で効果的な治療」は何でしょうか。私の“定番”は、アクティブなニキビとそのあとの瘢痕の両方をケアできる、中程度の深さのケミカルピーリングです。たとえば VI Peel は、すべての肌タイプ・スキントーンに対して安全性と有効性が確認されています。このほかにも、一部のノンアブレイティブレーザー(表皮を削らないレーザー)やマイクロニードリングも、色の濃い肌の瘢痕・色素沈着の治療に安全で効果的な選択肢です。いずれにしても、「スキン・オブ・カラー」の治療経験が豊富な医師・皮膚科専門医に相談し、自分専用のプランを立ててもらうことが大切です。
また、ケミカルピーリングを行う際には、「肌質」も必ず考慮すべきポイントです。すべての人に同じ処方が合うわけではありません。中程度の深さのピーリングにも複数の処方があり、それぞれ配合成分が異なります。たとえば、アクティブなニキビのコントロールには VI Peel Purify、乾燥傾向の肌で瘢痕や凹みが気になる場合には VI Peel Advanced、オイリー肌でニキビと瘢痕が混在している場合には VI Peel Purify with Precision Plus をおすすめしています。そして、「自分は敏感肌だからピーリングは無理」と決めつける必要はありません。VI Peel Original は、敏感肌にも使いやすいマイルドな処方です。
健康な肌づくりは“おうちケア”から
ニキビ跡ケアを成功させるには、クリニックでの治療と、⾃宅でのスキンケアがセットで考えられるべきです。ピーリング前後のホームケアをしっかり行うことで、クリニックでのケミカルピーリングの効果をぐっと高めることができます。私は患者さんに、「クリニックでの施術は『車を買うこと』、自宅でのスキンケアは『オイル交換』のようなものです」とよくお話しします。どんなに高性能な車を買っても、メンテナンスをさぼれば本来のパフォーマンスは出ませんよね。それと同じで、ホームケアはケミカルピーリングの成功に不可欠なパートなのです。
ニキビ跡の色ムラを整え、しつこい色素沈着を淡くしていくカギとなるのが、5%トラネキサム酸配合の VI Derm Dark Spot Lifting Serum です。これは、あらゆるスキントーンに対して、自宅での色ムラ・ニキビ跡ケアの“ファーストチョイス”として私がよく勧めている製品です。ブレイクアウト後の色素沈着をやわらげ、均一な肌トーンを維持する上で、とても頼りになる存在です。
Corey L. Hartman 医師(M.D., FAAD)について
Corey L. Hartman 医師は、アラバマ州バーミングハムに位置する Skin Wellness Dermatology の創設者兼メディカルディレクターです。また、アラバマ大学医学部皮膚科の臨床助教授も務めています。ルイジアナ州ニューオーリンズ出身で、エモリー大学で心理学の学士号を取得。その後、テネシー州ナッシュビルの Meharry Medical College で医学博士号(M.D.)を取得し、Tulane University Medical Center で内科研修を修了、さらにアラバマ大学医学部で皮膚科レジデンシーを完了しました。Hartman 医師は American Board of Dermatology(米国皮膚科専門医認定機構)の認定医であり、American Academy of Dermatology および American Society for Dermatologic Surgery のフェローでもあります。
専門分野としては、皮膚外科、注入治療(インジェクタブル)、毛髪再生、レーザー皮膚科に強い関心を寄せており、全米各地の学会で美容皮膚科治療や SNS マーケティングに関する講演を行っています。2016年には Birmingham Magazine 読者投票で「Best of Birmingham: Dermatologist」に選出され、2018年には About Town Magazine 読者から「Best Dermatologist」に選ばれました。2020年には、メンズスキンケアラインを展開する Old Spice の公式ドクター兼ブランドアンバサダーに就任。さらに Men’s Health Magazine、Allergan Aesthetics、Galderma Aesthetics、Revision Skin Care のアドバイザリーボードメンバーも務めています。最近では、Skin of Color Society(スキン・オブ・カラーに特化した国際学会)の理事にも選出されています。







