ホルモン入門(Hormones 101)

Written by Alia Brown, MD, FAAD as part of The Brown Skin Agenda Initiative.

皮膚科医やスキンケアの専門家はよく知っています。「体の中で起きていることは、必ず肌に現れる」ということを。ですから、常に変動しているホルモンが、メラニンリッチな肌に特有のトラブルを引き起こしても不思議ではありません。ここでは、ホルモンとは何か、そしてホルモンが色素の多い肌(skin of color)にどのような影響を与えるのかを、AからZまで総合的に解説していきます。

まずは基本から:ホルモンとは? 肌の健康にどう関わる?

ホルモンとは、血液中を移動しながら、組織・臓器・筋肉、そして肌にまで届けられる化学物質です。代謝(メタボリズム)や電解質バランスから、コラーゲン産生のアップに至るまで、あらゆる働きにとって不可欠な存在です。また、ホルモンは非常にパワフルでもあります。体内のホルモンバランスがほんの少し乱れるだけで、睡眠の質の低下や胃腸トラブルといった全身的な不調から、ニキビなどの肌トラブルまで、さまざまな問題を引き起こすきっかけになり得ます。

ホルモンは色素の多い肌に違う影響を与える?

結論から言えば、「はい」です。すでにメラニンの産生が高い肌(skin of color)では、ホルモン変動によってメラニン産生がさらに刺激され、色素沈着(hyperpigmentation)を起こしやすくなります。このような色素沈着は肝斑(melasma)として分類されることもあり、経口避妊薬(ピル)や妊娠などをきっかけに発症することがあります。メラニンリッチな肌は、炎症後色素沈着(PIH: post-inflammatory hyperpigmentation)も起こしやすく、これは傷・切り傷・ニキビ跡など「ダメージを受けた部位」でメラニンが過剰に作られることで生じます。次のセクションでは、ホルモンバランスの乱れから起こりやすい代表的な肌トラブル —— ホルモン性ニキビ、肝斑、そして黒色表皮腫(acanthosis nigricans)について詳しく見ていきます。

ホルモン性ニキビとは?

ホルモン性ニキビは、ホルモンの変動によって皮脂分泌が増加した結果起こるニキビです。増えた皮脂が毛穴の中で細菌と絡み合うことで、ニキビが形成されます。ホルモン性ニキビは主に女性、妊娠中の女性、更年期周辺の女性に多く見られます。顔だけでなく、首、胸元、肩、背中にも出現し、ストレス・高湿度・大気汚染などによって悪化しやすいのが特徴です。

一方で、エストロゲンのようなホルモンは、コラーゲン産生を高めたり、肌の保湿力を上げたり、バリア機能を強化したりするポジティブな側面も持っています。ただし、エストロゲンバランスが乱れると、生理前や生理中の敏感さの増加、皮脂過多、あるいは極端な乾燥などを引き起こす可能性があり、いずれもニキビや吹き出物の温床になってしまいがちです。

ニキビ自体は非常によくある肌悩みで(実際、ほとんどの人が人生のどこかで経験します)、色素の多い肌においては、炎症とコメド(白ニキビ・黒ニキビ)の形成が強く関与しているとする研究もあります。また、こうした肌質は炎症後色素沈着(PIH)や瘢痕(ニキビ跡)が残りやすい傾向があります。そのため、特にダークスキンのホルモン性ニキビを治療する際には、PIHを悪化させないよう、刺激や炎症を極力抑えたプロトコルが重要になります。

メラズマ(肝斑)とは?

メラズマ(melasma/肝斑)は、主に頬・上唇(口まわり)・額などに現れる、複数の茶色〜灰褐色の色素斑がまとまってできる状態です。多くの色素沈着と同じように、紫外線を浴びる機会が増える夏場に悪化しやすい傾向があります。

研究によると、メラズマは女性および色素の多い肌に多く見られます。これは、メラニンリッチな肌が紫外線ダメージから決して“無敵”ではなく、毎日欠かさずUVケアが必要であることを示す一つの証拠でもあります。特に妊娠中の女性は、エストロゲンとプロゲステロンの値が上昇することでメラズマを発症しやすいとされており、経口避妊薬の服用やホルモン変動によっても誘発されることがあります。

メラズマ治療を検討するときに知っておきたいのは、「すべてのタイプのメラズマが同じように治りやすいわけではない」という点です。表皮型メラズマ(epidermal melasma:肌の表層にとどまるタイプ)は、真皮型メラズマ(dermal melasma:より深い層にまで及ぶタイプ)に比べて、一般的に反応が良いとされています。治療法の選択を誤ると、特に色素の多い肌では症状悪化のリスクがあるため、IPLなど一部のレーザー治療は避けるべきケースもあります。必ず皮膚科医に相談し、自分の肌に安全で適切な治療プランを立ててもらいましょう。

黒色表皮腫(Acanthosis Nigricans)とは?
黒色表皮腫(acanthosis nigricans)は、ビロードのようにざらつきのある、濃い色の斑や線状の色素沈着が現れる皮膚疾患です。首の後ろなどのシワになりやすい部位に出現しやすく、わきの黒ずみの一因になることもあります。もっとも一般的には、インスリン抵抗性などの“インスリン問題”を抱える患者さんに多く見られますが、アジソン病、PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)、甲状腺機能低下症といったホルモン疾患がある方にも生じる可能性があります。見た目の特徴から診断がつくことも多い一方で、糖尿病予備群や甲状腺疾患のサインとして現れることもあるため、追加の血液検査などが必要になる場合もあります。現時点で黒色表皮腫そのものを“完治”させる治療は確立されていませんが、インスリン抵抗性など、原因となっている基礎疾患をコントロールすると、自然に薄くなるケースもあります。治療の一環として、皮膚科医がレチノイド(トレチノイン含有クリームなど)を処方したり、レーザー・ダーマブレーション・ケミカルピーリング(VI Peel Body Treatment のようなボディ用ピーリング)を勧めたりすることもあります。

ホルモンが引き金になる、その他の皮膚トラブルは?

ホルモンと肌トラブルの関係について、科学が解き明かしたのは、まだ「氷山の一角」にすぎないと言われていますが、日々研究は進んでいます。

すでに述べたように、ホルモン疾患・PCOS・甲状腺機能低下症などを抱える患者さんには、黒色表皮腫として診断されるような色素沈着が見られることがあります。また、顔の過剰な毛の増加も、ホルモンバランスの乱れを示すサインの一つです。これは「多毛症(Hirsutism)」と呼ばれる状態で、男性ホルモン(アンドロゲン)が過剰になることにより、女性でも本来なら男性に多い部位(口周り、下腹部、胸、背中など)に濃く太い毛が生えやすくなります。PCOS、先天性副腎過形成(congenital adrenal hyperplasia)、クッシング症候群(高コルチゾール状態)などは、多毛症の原因として知られている代表的なホルモン異常です。

ホルモンが原因の肌トラブルには、どんな治療がある?

ホルモンが関与する肌トラブルは、治療が難しい分野のひとつですが、近年は皮膚科医や医療従事者が使える治療の選択肢が増え、顔だけでなく全身のケアまで視野に入れたアプローチが可能になってきています。ケミカルピーリング(たとえば VI Peel)は、肌表面の古い角層をはがし落とすことで、過剰にメラニンを作り出しているメラノサイトに働きかける、臨床的に実証された成分を届けやすくします。皮膚科医やスキンケアの専門家は、ホルモン性ニキビ・肝斑・黒色表皮腫の見た目をやわらげるために、顔用の VI Peel とボディ用の VI Peel Body を組み合わせたシリーズ治療を提案することがあります。

メラニンリッチな肌でホルモン性ニキビや肝斑がある場合、Aerolase のような特定のライトベース(光治療)のレーザーに反応が良いケースもあります。このレーザーは、肌の深い層まで届いてニキビの原因となる細菌や皮脂を蒸散させると同時に、コラーゲン産生を促進し、新しくフレッシュでふっくらした細胞を表面に押し上げます。ただし、すべてのレーザーが色素の多い肌に安全というわけではなく、IPLなど避けるべき機器もあるため、必ず資格を持つプロに相談しましょう。

また、レチノイド(OTCのレチノールや、処方薬のレチノイン酸/トレチノイン)は、ホルモン性ニキビ治療の“ゴールドスタンダード”であり続けています。レチノイドは細胞のターンオーバーを促し、毛穴詰まりを改善し、抗炎症作用を発揮、さらに過去のニキビ跡や色素沈着の改善にも役立ちます。処方専用の VI Derm Retinoic Serum(0.1% トレチノイン配合) は、皮膚科グレードかつ作用が早く、ザラついた肌のテクスチャーをなめらかにし、シミをぼかし、ホルモン性ニキビからの回復をサポートするよう設計されています。

日々の紫外線対策(SPF)は、そもそも健康な肌を保つうえで欠かせませんが、上記のような治療を行っている間は、とくに重要性が増します。SPF30以上の広範囲(ブロードスペクトラム)対応の日焼け止めをこまめに塗り直す(2時間おきが目安)ことで、せっかくの治療効果が遅れたり、逆戻りしたりするのを防ぎましょう。治療中の肌には、VI Derm SPF 50 Broad-Spectrum Sunscreen のような高SPF・高機能の日焼け止めがおすすめです。

色素の多い肌が避けるべき治療は?

色素の多い肌では、一部のケミカルピーリングによって逆に色素沈着が悪化したり、長引いたりするリスクがあるため、選択肢がやや限られます。とくに深いレベルまで作用するディープピーリングは避け、色素の多い肌にも対応した“コレクティブ(修正目的)”なピーリング、たとえば VI Peel のような製品を選ぶことが推奨されます。VI Peel シリーズは、すべてダークスキンでも安全かつ有効であるよう設計されています。レーザー治療もホルモン由来の肌トラブルには有効な場合がありますが、先述のようにIPLレーザーなど、ダークスキンが避けるべきものも存在します。一方、Aerolaseのような、よりライトでノンアブレイティブ(非蒸散型)のレーザーは、一般的に全てのフィッツパトリックタイプに対して“比較的安全”とされています。とはいえ、最適な治療は肌の状態によって変わるため、必ず皮膚科医や医療従事者と相談のうえ、肌の反応を確認しながら進めることが大切です。専門家の診察なしに、治療法を独断で「良い/悪い」と判断しないよう注意しましょう。

VI Peel でホルモン性ニキビ・メラズマ・黒色表皮腫などをケアする

ボード認定の皮膚科医として10年以上、多くのホルモンバランス由来の肌トラブルを診てきました。これらの症状は、患者さんにとってストレスフルで、長期戦になりがちな悩みですが、安全かつ有効な治療オプションは思っているより豊富にあります。私の臨床経験では、顔用・ボディ用の両方の VI Peel が、ホルモン性ニキビ、メラズマ(肝斑)、黒色表皮腫など、多くの“ホルモンが関与する肌トラブル”に対して非常に有用であることがわかっています。VI Peel は肌を穏やかにピーリングしながら、しつこい色素を少しずつリフトアップしていくことで、メラズマや黒色表皮腫などのホルモン関連の色素トラブルを改善します。色素沈着がメインの場合には、VI Peel Precision Plus をおすすめします。また、VI Peel はホルモン性ニキビの“なりやすさ”そのものにもアプローチし、時間の経過とともにニキビの頻度と重症度を軽減しつつ、同時にニキビ跡の色素も持ち上げていきます。ホルモン性ニキビとその瘢痕には、VI Peel Purify with Precision Plus をよく推奨しています。以下は、実際に治療させていただいた患者さんのビフォー&アフター写真の一例です。

最後に、どんな治療よりも大切なのは「予防」です。年に一度は健康診断・婦人科検診などを受けるとともに、肌に現れるごく小さなサインを見逃さないようにしましょう。私たち医療従事者は、ときに“病気そのもの”が顕在化する前に、肌の変化から異変を察知できることがあります。気になる症状がある場合は、かかりつけ医や皮膚科医にぜひ相談してみてください。あなたの肌が、これからもヘルシーに、そして美しく輝き続けますように。

Melasma in Light Skin
Hormonal Abnormalities
Melasma in Skin of Color

 

Dr. Alia Brown(MD, FAAD)について

Dr. Alia Brown は、Meharry Medical College にて優秀な成績を収め、医学部の名誉団体 Alpha Omega Alpha Medical Honor Society に選出されたのち、2010年に Georgia Dermatology Partners に参加しました。これまでに複数の医学雑誌・皮膚科学雑誌で論文を発表しており、American Academy of Dermatology、American Medical Association、Women’s Dermatology Society、Alpha Omega Alpha Honor Medical Society、Delta Sigma Theta Sorority Inc. の会員でもあります。

Dr. Brown は、患者さんと二人三脚で「最も健康で、美しい肌」を目指すスタイルに定評があります。レーザーと皮膚外科のスペシャリストとして、美容皮膚科(レーザー治療や注入治療など)を中心に診療を行っています。患者さんのウェルビーイングを何よりも重視し、一人ひとりにとって最適で成功率の高い治療プランを設計することに情熱を注いでいます。プライベートでは、旅行・運動・ボランティア活動を楽しみ、家族(夫と3人の子どもたち)との時間も大切にしています。

参考文献:

The Journal of Clinical and Aesthetic Dermatology, 2010, volume 3, issue 4, pages 24-38

Journal of Cutaneous and Aesthetic Surgery, 2012, volume 5, issue 4, pages 247-253

Cleveland Clinic Website, Health & Diseases, Hormonal Acne

Cleveland Clinic Website, Health & Diseases, Melasma

Cedars Sinai Website, Health Library, Hirsutism in Women

The Mayo Clinic Website, Diseases and Conditions
American Academy of Dermatology Association Website, Diseases & Conditions